遺産分割協議書の作成

遺産分割

遺産分割は,相続開始後,共同相続人の共同所有に属している相続財産を,各共同相続人に分配,分属させる手続きです。

共同相続人による遺産の共同所有関係について,民法は「相続人が数人あるときは,相続財産は,その共有に属する」としています(民898条)。

遺産分割協議

⑴ この遺産分割の手続の一つとして「協議による分割」があります。

この協議を遺産分割協議といい,この協議により作成される書面を遺産分割協議書といいます。

⑵ 共同相続人は,原則,いつでも遺産分割協議で遺産の全部または一部の分割をすることができます。

⑶ 遺産分割協議の成立には,共同相続人全員の意思の合致が必要です。全員の意思の合致があれば,分割の内容は共同相続人の自由で,特定の相続人の取得分を「0(何も取得しない)」という遺産分割協議も有効です。

なお,遺産分割協議は,共同相続人全員の意思の合致が必要ですが,相続人全員が一堂に集まって協議する必要はなく,電話,メール,手紙等でのやり取りでも構いません。

⑷ また,遺産分割の方法についても,現物分割,換価分割,代償分割等,自由に行うことができます。

遺産分割協議書

⑴ 遺産分割協議書はパソコンで作成したり,ボールペン等で手書きで作成することができますが作成した後には,共同相続人全員が署名押印する必要があります。

⑵ 遺産分割協議書を作成しないと,不動産の相続登記,預貯金・株式・自動車等の名義変更ができません。

このように相続登記,名義変更等の手続きを行うには「実印」を押す必要があり,印鑑証明書の添付も必要になります。

⑶ 遺産分割協議書が複数枚に渡る場合には,この遺産分割協議書が一体であることを示すため,相続人全員の実印で契印をしてください。

⑷ なお,署名押印は,共同相続人全員が同時に行わなければならない訳ではなく,作成された遺産分割協議書を持ち回りにし,相続人の1人が署名押印し,別の相続人に郵送などして,順に署名押印していく方法でも構いません。

⑸ 別紙として「遺産分割協議書」のサンプルを示します。

なお,実際の遺産分割は,その遺産の対象,分割の方法など様々ですので,あくまでも参考です。

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議の作成には,次の注意点があります。

⑴ 相続人の確定

遺産分割協議の成立には,共同相続人全員の意思の合致が必要です。相続人の一人でも遺産分割協議に参加しないと,この遺産分割協議は無効になります。

相続人の確定のためには,被相続人の出生から死亡までの身分関係の変動を把握できる戸籍謄本,除籍謄本,改製原戸籍等を取り寄せることが必要となります。戸籍謄本等の記載を確認すれば,認知された非嫡出子や,過去の婚姻中の子をみつけることもできます。

また,相続人の住所については,戸籍の附票や住民票を取り寄せることで把握できます。

⑵ 被相続人の氏名等の明記

遺産分割協議書には,相続の内容を特定するため,「被相続人」の氏名,死亡日(相続開始日),本籍地,及び「相続人」の住所,氏名(自署)の記載が必要です。

相続人の住所,氏名は,戸籍附票,住民票,印鑑証明書に記載されているとおりにしてください。

⑶ 遺産の表示

ア 遺産に「不動産」がある場合は,不動産登記簿の記載どおりにしてください。例えば,土地の場合は不動産登記簿上の「所在」「地番」「地目」「地積」を記載する必要があります。その後に行われる相続登記に支障があるからです。

イ 「預貯金」の場合は,通帳等を調べ,銀行名だけでなく,支店名,口座番号の記載も必要です。

ウ 「株式」の場合は,証券会社からの取引残高報告書,会社からの配当通知書等を参考にし,会社名と保有株式数を記載します。

エ なお,「預貯金」「株式」「自動車」の名義変更では,銀行,証券会社,運輸支局で専用の書式への署名押印を要求される場合がありますので,あらかじめ確認しておく必要があります。

遺産分割での注意事項

⑴ 相続人が行方不明の場合

「相続人の確定」の項で述べましたが,相続人を確定したものの,相続人が行方不明の場合もあります。

この場合は,次の方法を取ることになります。

ア その行方不明者の生死が不明で失踪宣告の要件(民法30条)を備えている場合には,行方不明者の配偶者,共同相続人等の利害関係人は,行方不明者の住所地の家庭裁判所に失踪宣告の申立てをすることができます。

失踪宣告の結果,行方不明者は死亡したものとみなされ(民法31条),その行方不明者について相続が開始されます。

行方不明者に相続人がいる場合はその相続人が,相続人がいることが明らかでない場合は家庭裁判所で選任された相続財産管理人が遺産分割協議に参加することになります。

イ その行方不明者について,生存は明らかだが行方不明となっていて,調査を尽くしてもその住所が判明しない場合は,その行方不明者を不在者として手続きを進めることになります。

この場合,共同相続人は,遺産分割協議を行うため,利害関係人として,不在者の財産管理人の選任を家庭裁判所に求めることになります。

そして,遺産分割協議は,不在者の財産管理人を参加させて行うことになります。

⑵ 相続人が未成年者である場合

共同相続人の中に未成年者がいる場合,その法定代理人である親権者が未成年者に代わって遺産分割協議を行うことになります。

ただし,次の場合は,未成年者と親権者とが利益相反になるため,未成年者のために,家庭裁判所へ特別代理人の選任の申立てをする必要があります(民法826条)。

ア 親権者と未成年者とが共に共同相続人であり,親権者が未成年者の代理人としても遺産分割協議を行う場合

イ 親権者を同じくする複数の未成年者がいて,その親権者がそれぞれの未成年者の代理人として遺産分割協議を行う場合

ただし,このイの場合は,親権者は,複数の未成年者の1人の代理人はできますが,その他の未成年者について特別代理人の選任が必要となります。

⑶ 相続人に胎児がいる場合

相続に関する胎児の権利能力について,民法は「胎児は,相続については,既に生まれたものとみなす。前項の規定は,胎児が死体で生まれたときは,適用しない」(民法886条)と定めています。

胎児を除いて遺産分割協議をしてしまうと,胎児が生まれてきた場合に,遺産分割協議をやり直すことになります。

相続開始から10か月前後で出生が確認できるので,遺産分割協議は出生の時まで待つべきだと思います。

⑷ 認知症の相続人がいる場合

遺産分割協議は法律行為なので,法律行為の一般原則に従う必要があります。

認知症の相続人は,成年後見人が認知症の相続人に代わって,遺産分割協議に参加します。

Last Updated on 7月 13, 2023 by takajo-souzoku

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