遺産分割協議の内容を守らない人がいる場合

遺産分割調停を経ないで遺産分割協議をし、遺産分割協議書が完成したとしても、その内容を守らない、つまり遺産分割協議書の記載内容が履行されないという場面が生じてくることがあります。このような場合、どのような対応をするべきなのでしょうか

遺産分割協議とは

遺産分割協議とは、被相続人の遺産を相続する人との間でなされる遺産をめぐる話しあいのことです。

相続人の少なくとも一人が、この話しあいを拒否する場合、もしくはこの協議の内容に同意しない場合、他の相続人間で話しあいがまとまっていても遺産分割協議は成立しないことになります。

遺産分割協議に同意しない相続人がいる場合の遺産分割協議の進め方

1.履行してもらえるように交渉

まずは履行を促すように交渉をするということが考えられます。もっとも、履行を促しても応じてくれない場合もあるかと思います。ですが、履行をしてくれないことを理由として遺産分割協議を解除することは、最高裁の判例によれば認められていません。その理由は、①遺産分割協議は成立した段階で終了し、後は協議において債務を負担した相続人と債権を取得した相続人間の債権債務関係のみが残ることになる結果、当該債権債務の履行の問題として把握されること、②遺産分割協議の成立により、各遺産は相続開始時に遡って各相続人に帰属することになるから、やり直しをすることになると、法的安定性が損なわれるから、とされています。

2.家事調停の申立て・審判

1人でも話しあいに応ぜずもしくは話しあいに応じても話しあいがまとまらず全員で合意できない場合には相続人の一人が申立人となり、他の相続人を相手方として、家庭裁判所に遺産分割の調停の申立てをする必要があります。

調停でも話しあいがまとまらない場合、調停は不調となり、審判に移行し、家庭裁判所の裁判官が審判してくれることになります。

この審判には判決と同じ効力があり、当事者のどちらかが高等裁判所に抗告の申立てをしなければその審判の内容が確定し、この内容で遺産が分割されることになります。

遺産分割協議の期限

法律上の遺産分割協議の期限

遺産分割協議の期限は法律で何ら定められていませんので、いつ行ってもよいということになります。

民法907条では、「遺産分割の協議はいつでもできる。」と定められています。

但し、いつまでも遺産分割協議をしなかったり、協議をしてもまとまらなかった場合、この間、仮に相続人の1人が死亡した場合、その人の相続人が相続するので当事者が多数になり、解決も容易でなくなることが多いものです。

相続税の申告期限

遺産分割協議の期限に定めがないからといって、相続税が賦課される場合、税務署に対する相続税の申告期限は、相続税法により相続の開始を知った日の翌日から10か月以内にしなければならないことになっています。

この期間内に相続税の申告手続きをしないと、無申告加算税や延滞税が賦課されることになります。

又配偶者控除の特例や小規模宅地等の特例による相続税額の軽減ができなくなることがあります。

このため、遺産分割協議には期限がないからといって、いつまでも協議を成立させないと上記のような不利益があります。

もし相続税申告に間に合わない場合

10か月以内に遺産分割の協議ができない場合でも、法定相続分に従がって相続税を支払っておけば相続税法上何らの問題はありません。

その後遺産分割協議が成立したら、それに従い修正申告をすればよいのです。

又法定相続分による申告をした場合、あわせて、分割見込書の提出をしておけば、申告期限から3年以内に遺産分割協議が成立した場合には、上記の特例による相続税の税額を軽減することができ、納め過ぎた税金の還付を受けることが可能です。

次のような制度も早く遺産分割協議をする方がよいことの理由になります。

不動産の相続に特有の期限

不動産を相続した場合、不動産の名義を被相続人から相続人に移転登記する必要があります。

今までは相続登記に期限はなく、放置されることが多かったのですが、民法が改正され、2024年4月1日施行分から3年以内の相続登記が義務化されています。

こうして不動産の相続登記は相続の開始を知った日から3年以内にしなければならず、しない場合は10万円以下の過料の制裁があります。

相続登記の期限までに遺産分割協議がまとまらない場合、相続登記の代わりに「相続人申告登記」をしておけば、一時的に相続登記の申請義務を果たしたとみなされます。

相続人申告登記をした後は、相続人間で遺産分割協議が成立してから3年以内に相続登記をする必要があります。

このような定めがありますので、可能な限り3年以内に遺産分割協議の合意を成立させることがベターです。

株式や預金の相続の場合

又預金や株式の相続にも注意を払う必要があります。

銀行に預金の払い戻しを請求する権利(預金払い戻し債権)は民法166条1項1号により、債権者が権利を行使できることを知った日から5年間行使しないときは消滅時効が完成してしまいますし、民法166条1項2号により預金の存在を知らない場合でも「債権者が権利を行使できる時から10年が経過したとき消滅時効が完成する。」となっていますから、いずれの場合でも注意しましょう。

但し金融機関にはこの期限が経過しても、払い戻しに応じているところもあります。

消滅時効の完成が気になる場合、金融機関に事情を通告しておけば消滅時効の中断にもなるものと思います。

相続財産に株式がある場合で、株主の名義変更を行わず放置してしまうと5年で株主でなくなってしまいます。

すなわち、株主への通知、催告から5年以上継続して到達せず、かつ、5年間継続して配当を受領しなかった場合、発行会社はその株式を競売や任意売却できることになっているので5年間の経過により株主でなくなってしまうことになります。

こうした場合も何故株式の名義を変更できないかを発行会社や担当の証券会社に伝えておけば権利は継続することになります。

寄与分の主張期限

又相続の開始後10年を超えた特別受益や寄与分の主張ができなくなっていますので、相続人が他の相続人に特別受益があると主張したい場合、もしくは自分の寄与分の主張をしたい相続人は10年が経過する前にこれらの主張をする必要があります。

さらに10年以内に遺産分割の協議の成立させることがベターです。

10年が経過してしまうと家庭裁判所は法定相続分もしくは指定相続分による分割しか認めておりません。

もっとも、相続人間で特別受益、寄与分が合意される場合にはそれが優先します。

遺産分割協議を当事務所の弁護士に依頼するメリット

面倒な調査や書類収集を依頼できる

遺産分割を進めるためには、相続人の調査と確定、相続財産にどのようなものがあるか等の調査や相続財産の確定が必要となります。

又相続財産の目録の作成も必要となり、いろいろな書類を取り寄せる必要があり、遺産分割に慣れない人にとりましては、なかなか困難な作業です。

相続人の調査と確定は、被相続人の出生から死亡に至るまでの、すべての戸籍謄本、除籍謄本を市役所等から入手する必要があります。

仮に被相続人が離婚や再婚、養子縁組をしている場合には、予想外の相続人が存在していることもあり、慎重な調査が必要です。

こうした調査をし、被相続人の相続財産がどのようなものであるか調査し、遺産の範囲を確定することになります。

相続財産には、土地、建物の不動産、預貯金、株式や債券などの有価証券が代表的なものですが、この存在を調査するためには不動産登記簿謄本、不動産の固定資産評価証明書、名寄帳、残高証明書が必要となり、弁護士でなければ入手できない資料がありますので、この場合、当事務所に遺産分割協議の依頼をしていただければ、入手するための実費を除き、すべての費用が弁護士着手金や報酬金の中に含まれますので依頼者が頭を悩ませることはありません。

遺産の範囲やその評価額の算定は財産目録の作成にはとても重要な事項で、後になって新たな遺産が見つかると遺産分割のやり直しということも予想されますので、このようなことを自分でできないと思った場合弁護士に依頼するのがベストです。

連絡が取りづらい相続人とのやり取りを任せられる

又、相続人の1人が他の相続人と手紙や電話、メール等でやり取りしたくないこともありますので、この場合、すべてを弁護士に依頼し、交渉してもらえばベターです。

さらに相続人の1人が行方不明ということもありえます。

この場合、弁護士に依頼し、行方不明者の存在を確認してもらうこともできますし、行方不明になって7年以上が経過している場合には、家庭裁判所に失踪宣告の申立てをしてもらうこともできます。

さらに行方不明になって7年以上が経過していない場合には家庭裁判所に不在者財産管理人の選任をしてもらう必要があり、この申立ても弁護士に依頼すればよいでしょう。

このように自分ではできないと感じた場合弁護士に依頼すればわずらわしさがなくなります。

紛争になった場合の交渉も依頼できる

遺産分割に関して、相続人の間で意見が分かれ、話し合いでは意見がまとまらずに紛争になってしまう場合も残念ながら少なくありません。しかしもし紛争になり、調停や審判が必要になった場合に、弁護士であればそのまま対応を続けることができます。紛争前から状況を知っている弁護士がそのまま対応できるため、状況の説明などが二度手間になることも避けられます。

遺産分割についてお悩みの方は当事務所までご相談ください

当事務所も既に50年以上の歴史があり、設立以来、多数の相続案件を依頼されていますので、安心して、当事務所にご依頼いただければ幸いです。

お電話でお問い合わせ TEL:0120-331-348 鷹匠法律事務所お電話でお問い合わせ TEL:0120-331-348 鷹匠法律事務所

0120-331-348

平日法律相談 9:00~20:00 土曜法律相談 10:00~16:00

メールでのお問い合わせ