はじめに
相続人間で、遺産分割の協議が全くできない場合、もしくは話しあいができても協議が成立しなかった場合は、家庭裁判所に遺産分割の調停の申立てをすることにより調停委員や裁判官の助言や法的な見解を聞いて各相続人が自分の考え方が法的にも合致しているか否か、ここでいくらかでも譲歩すれば円満な解決ができ穏やかなくらしができるのかを判断して最終意思を確定することになります。
この調停でも合意がなされず不成立となった場合、審判手続に移行し、調停で収集できた資料や各相続人の意見を聞いて裁判官が法定相続分に基づいて、審判をしてくれます。
審判の結果に不服な場合は、高等裁判所に抗告の申立てができます。
いずれにしても、審判は判決と同じ強制力を有し、この判断に基づいて遺産が分割されることになります。
遺産分割協議がまとまらないよくある事例
相続人間での話しあいによる遺産分割協議でまとまらないことはよくありますが、まとまらないよくある事例は次のようなものです。
遺産の中に不動産がある場合
遺産の中に不動産が存在する場合、相続人間でなかなか話しあいが進まないことがあります。
話しあいが進まない理由の代表的なものは下記のとおりです。
不動産の評価額をいくらにするのかで話しあいがまとまらない。
遺産分割をする場合の不動産評価額はおおよそ次の場合があります。
ア.相続開始時の市場価値、イ.国土交通省の調査による公示価格、ウ.税務署にある路線価に基づく価格、エ.市町村にある固定資産税評価額です。
相続人間でこのうちのどれにするかで合意できれば何も問題ないのですが、不動産を取得する相続人と取得しない相続人との間で利害関係が生じもめごとになることが多いものです。
不動産を取得したいと考えている相続人はなるべくこの額を低くしようとし、不動産以外の他の預貯金等を取得したいと考えている相続人は、不動産の評価額を高くしたいと思っています。
ここにもめごとの最大の原因があります。
市場価格や公示価格にする方が一番公正だとは思いますが、それより低い路線価格、固定資産税評価額を主張する相続人もおり、何を取得するかで利害関係が異なってしまうからです。
この場合、不動産鑑定士に不動産価格の鑑定を依頼すれば最も公平ですが、その場合鑑定費用がかかります。
不動産業者に不動産の簡易な調査や見積書の作成を依頼し、これによって解決する方法も、費用をあまり使わないという点で利点もありますが、不動産鑑定士による鑑定書ほど重みがなく、各相続人が、それぞれ価格の異なる調査書や見積書を提出することも多く、なかなかこれによりまとまらないことも多いです。
不動産の分割方法で、話しあいがまとまらない。
不動産は、預金や現金と違って、そう簡単に分けることができないものです。
不動産の分割方法には次の4つの方法があります。
①不動産の現物をそのまま配分する方法
A建物と土地は長男に、Bマンションは長女に、Cアパートは二男になど、それぞれ独立の不動産を分配する方法です。
②代償分割
相続人の1人が不動産を相続し、他の相続人に代償金を支払うという方法です。
③換価分割
不動産を分割して、その売却益(不動産仲介料等の売却するに要した経費を除いた金額)を各相続人が相続割合に応じて分配する方法
④共有分割
1つの不動産を複数の相続人が相続割合に応じて共同して所有する方法
どの方法で分割し、それをどの相続人が所有するかは相続人間でよくもめごとが発生し、なかなか解決ができないことが多いです。
不動産を取得し、その不動産に居住したい相続人がいればそれを主張し、そのかわり、他の相続人に代償金を支払うとの代償分割はよくやられていますが、話しあいでまとまらず、調停や審判に移行しても調停委員や裁判官はその相続人の居住の必要性を検討し、居住の必要があると認めた場合で、代償金の支払いが担保されていると考える場合には代償分割もよく採用されています。
遺産が不動産のみで、現金化しないと分配するお金がない場合換価分割もよく行われている方法です。
先祖伝来の不動産を売却する場合には先祖に申し訳ないという思いも持ちましょうが、現金化することで、最も平等な遺産分割をすることができるようになります。
又遺産の土地が広く分割しやすいという場合には土地を分筆することによって、現物での分割も可能になります。
土地が広い狭いに関係なく、相続人間で話しあいがまとまらない場合、やむなく土地の共有による分割をすることになります。
しかし、この方法は遺産分割の具体的解決を子や孫の世代に先送りするものとして、あまりお勧めできない方法です。
すなわち、不動産を売却したり、他に貸したりする場合、共有者全員の同意が必要になり、さらに維持費や固定資産税の負担でも、もめる原因となります。
又共有者の1人が亡くなった場合には相続が開始し、相続人の数が増え、意思疎通を図ることが困難となることが多いです。そのために当事務所ではなるべく共有分割でない遺産分割をお勧めしています。
被相続人に遺言が存在しない場合には民法に決められた法定相続分により分割するのが普通ですが、相続人の中には法定相続分以上に遺産を取得したいと主張する者もおり、なかなか話しあいが進まないこともあります。
ある相続人に寄与分がある場合や、他の相続人が生前贈与を受けていた場合などは、その相続人が遺産を多くもらうための正当な理由になりますが、このような理由に該当しない場合も、感情的な理由から法定相続分以上に取得したいと主張する相続人がいます。
この場合、早期に家庭裁判所に遺産分割の調停の申立てをすることがベターです。
相続人間での話しあいができない場合の対処法
すでに、1のはじめの項で述べていることに尽きますが、話しあいにより遺産分割の協議が成立しない場合には相続税の確定や不動産の所有名義の確定もできないことになり、相続人に各種の不利益となる事態が発生しますので早期に弁護士に相談し、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立ててもらいましょう。
調停で話しあいが成立しなくても、審判に移行し、裁判官が確定的な判断をしてくれ、それにより最終的な遺産分割がなされます。
これをまとめますと、解決までは次のような流れになります。
遺産分割協議 | 相続人間で話し合う |
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遺産分割調停 | 裁判官、2名の調停委員が入り、裁判所で話し合う |
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遺産分割審判 | 各相続人の主張や資料をもとに裁判所が遺産分割方法を決定する |
こうした手続により、法定相続分を尊重した解決になります。
弁護士に相談するメリット
弁護士は遺産分割の方法等の相続法規、審判例に精通しており、その上代理権も独占しており、弁護士以外の職業の方は報酬を得て遺産分割の件に関与することは、弁護士法で禁止されています。
これに違反して、業務をする者は非弁行為と認定されることになり、悪質な場合は、弁護士法により処罰されることもあります。
遺産分割でお悩みの方は弁護士にその業務を依頼することがよりベターな解決につながります。
弁護士が代理して、他の相続人と話しあい、解決することも多いですし、又家庭裁判所では弁護士のみに代理権が認められていますので、依頼者に代わり、依頼者の言い分を書面もしくは口頭で十分に言い尽くしますのでどきどきしたり、オドオドすることはなく安心です。
まとめに代えて、当事務所の対応
当事務所は設立以来、既に50年以上の歴史を有し、この静岡県の地に根づいている法律事務所です。
当事務所は相続問題の解決を重視し、今まで多数の相続案件の処理を依頼されており多数の案件の解決をしてきています。
相談料は無料で、親切に対応していますので安心して当事務所にご連絡ください。
静岡県中部地域を中心にして、静岡県の東部や西部地域にお住まいの方の案件もお引き受けしていますのでお気軽にご相談ください。